プーリー効率

レスキューの際に要救助者を引き上げる時や、チロリアンブリッジの展張をする際などにブースト(倍力)システムを構築します。

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それらの際に、プーリー(滑車)を多用しますが、プーリーにはたくさんの種類があり、それぞれに形や滑らかさが違います。

プーリーの滑らかさの指標は「プーリー効率」として表され、伝達可能な力の割合を示します。

また実際の現場では、プーリーが足りずにカラビナでロープを折り返したり、

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下降変換機能を付帯したりするために、プーリーのかわりにボビン系の下降器を組み込んだりします。

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それらがどれほどの力を損失しているのかが気になりました。

あまりに損失が大きいようだとブースト(倍力)を組む意味がなくなってしまいます。

実験しました。

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Aの重りが持ち上がるまでBを徐々に荷重しました。

A=43.3Kgで実験を行いました。

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定滑車にあたる部分を、単管パイプ、カラビナ、リボルバー(プーリー内蔵カラビナ)、グリグリ、リグ、ストップ、フィックス、ミニ、レスキュー、ミニトラクション、プロトラクションでそれぞれ実験しました。

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A/Bの値をプーリー効率としました。

以下のような結果がでました。

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カラビナや下降器のプーリー効率が計算できたので、プーリーとどれほど違うのかが明らかになりました。

プーリーに関しては、PETZLのカタログとは少し違う値が出ましたが、新旧の誤差でしょうかね。

ボールベアリングが入った高効率プーリーがいいのは当たり前として、リグやストップがこれほど悪いとは思いませんでした。

それに比べ同じボビン系ディッセンダーのグリグリは少しましです。

ローファリング機能を付加するのであれば、リグやストップよりグリグリがよいですね。

気になっていたカラビナは、プルパワー(引き力)の半分以上を損失することがわかりました。

接触面積ではカラビナより単管パイプの方が大きいはずなのにカラビナの方が効率が悪いです。

あまり急角度でロープを曲げることも力の損失につながるようです。

また、先端に極小プーリーを内蔵し、画期的と思えるリボルバーも前述の理由からか、普通のカラビナとそんな劇的には変わりません。

いやー、面白い実験でした。
2015/11/20 14:29 Update
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